yohhoyの日記

技術的メモをしていきたい日記

C++

yield式を使わないジェネレータ

C++2a(C++20)コルーチンにはジェネレータ実装を容易にするco_yield式が導入されるが、動作仕様的にはco_await式のシンタックスシュガーとなっている。 #include <coroutine> #include <iostream> #include <utility> #define MIMIC_CO_YIELD 1 #if MIMIC_CO_YIELD // yield式相当を表現する</utility></iostream></coroutine>…

C++20標準ライブラリ仕様:Constraints/Mandates/Preconditions

C++2a(C++20)標準ライブラリの関数仕様記述で用いられる Constraints/Mandates/Preconditions の違いについてメモ。 現行C++17標準ライブラリの Requires は廃止され、C++2aでは Constraints/Mandates/Preconditions に細分化される。 Mandates: 型や定…

関数型への参照型にまつわる特例ルール

C++

プログラミング言語C++の関数型(function type)には左辺値(lvalue)しか存在しないが(→id:yohhoy:20200530)、左辺値参照型(R (&)(Args...))/右辺値参照型(R (&&)(Args...))いずれにも束縛できる。そう、よかったね。 #include <utility> using std::move; // 右辺値</utility>…

関数型の右辺値は存在しない

C++

プログラミング言語C++に「関数型(function type)の右辺値(rvalue)」は存在しない。関数型をもつ式の value category は常に左辺値(lvalue)となる。だから何? int v; struct S s; void f(); std::move(v); // xvalue std::move(s); // xvalue std::move(f);…

コンストラクタ/デストラクタ×仮想関数呼び出し

C++においてコンストラクタ/デストラクタからの仮想関数呼び出しそれ自体はwell-definedだが、おそらくC++プログラマの期待する振る舞いではない。バグの温床になりえるため、大抵のコーディング規約で禁止している(はず)。かつてClangに本件を検知する警…

単一メンバunionの使い道

C++

プログラミング言語C++において、単一メンバしか含まない共用体(union)を用いるとオブジェクトの明示的な生成/破棄操作が可能となる。貧者(poor man's)のOptional。 #include <iostream> template <typename T> union Wrapper { // 共用体のコンストラクタ/デストラクタ定義は必須</typename></iostream>…

独自診断メッセージ diagnose_if属性

Clangコンパイラはユーザ定義のコンパイル警告/エラーメッセージ出力を行うdiagnose_if属性を提供する。 The diagnose_if attribute can be placed on function declarations to emit warnings or errors at compile-time if calls to the attributed funct…

イテレータに->演算子オーバーロードは必要?

C++標準ライブラリが定める InputIterator 要件(requirement) と input_iteratorコンセプト(concept) の変遷についてメモ。まとめ: C++2a(C++20) input_iteratorコンセプトではイテレータ型にoperator*オーバーロードのみ要求する。operator->オーバーロー…

same_asコンセプトとSymmetric Subsumption Idiom

C++2a(C++20)ライブラリ提供の標準コンセプトstd::same_as、およびコンセプト定義における対称包摂イディオム(Symmetric Subsumption Idiom)についてメモ。制約式std::same_as<X, Y>と制約式std::same_as<Y, X>は対称関係、つまり互いに一方が他方を包摂する(subsume)関</y,></x,>…

20分くらいでわかった気分になれるC++20コルーチン

20分くらいでわかった気分になれるC++20コルーチン本文こちら→C++ MIX #5に参加しました - yohhoyの日記(別館)スライド資料:https://www.slideshare.net/yohhoy/20c20 関連URL C++コルーチン拡張メモ(N4736) - yohhoyの日記 C++コルーチン拡張メモ - Qi…

コンセプト制約式の包摂関係とオーバーロード解決

C++2a(C++20)で導入されるコンセプト(concept)に関して、制約式(constraint-expression)間の包摂(subsume)ルールに基づくオーバーロード解決のメモ。本記事の内容はStackOverflowで見つけた質問と回答に基づく。要約:制約式の包摂関係(subsumption relation…

C++標準コンセプトの名前付けガイドライン

C++2a(C++20)標準ライブラリに導入される コンセプト(concept) の名前付けガイドラインについて。2019年Cologne会合にて (PDF)P1754R1 が採択され、Ranges TS提案当初から PascalCase 形式で検討されていた命名規則から snake_case 形式へと変更された。これ…

nan("is Not-a-Number")

C C++

プログラミング言語C/C++における浮動小数点数 NaN(Not-a-Number)*1 について。C/C++標準ライブラリはquiet NaN*2を返すnan関数を提供し、同関数では処理系定義(implementation-defined)のタグ文字列を受け取る。一般的には空文字列""を指定するが、ライブラ…

Hidden Friends

C++

プログラミング言語C++におけるライブラリ設計で「ADL(Argument Dependent Lookup)経由でのみ呼び出し可能な非メンバ関数/演算子オーバーロード 定義」を実現するテクニック。2019-12-03追記:2019年11月会合にて (PDF)P1965R0 が採択され、C++標準規格上の…

定数式を要求するコンセプト

C++2a(C++20) Conceptを利用した「ある式が定数式であること」を要求する制約式の定義。型パラメータTに対して「T::size()がコンパイル時に評価されること」を要求するコンセプトHasConstantSizeの定義例。requires式(requires-expression)中の typename typ…

オーバーロード解決の優先順位制御

C++

プログラミング言語C++における関数テンプレートのオーバーロードにおいて、SFINAEと組み合わせてオーバーロード解決の優先順を制御するテクニック。 選択候補が2個のケース 2つの型T, Uに対して、1) 演算 T / U が定義されていれば同演算子を、2) そうでな…

Customization Point Object

C++2a(C++20)標準ライブラリに導入される Customization Point Object についてメモ。*1まとめ: Customization Point == ユーザ定義型に対して事前定義した動作カスタマイズ可能点。具体的な処理実装ソースコードから呼び出される名前。 2021-06-29追記:C+…

swap(T, U)とis_swappable_with<T, U>とvector<bool>

C++17標準ライブラリには「型が異なる変数間での値交換(swap)」可能か否かを判定するメタ関数std::is_(nothrow_)swappable_with<T, U>が存在する。一般的には値交換操作は同一型変数間(swap(T&, T&))で行われるが、プロキシ型(proxy)のような特殊ケースにおいて異</t,>…

Goodbye "bit" in C++, (Partially)

C++2a(C++20)言語仕様の定義においては、用語 "bit" の利用はできるだけ回避される(完全に無くなる訳ではない)。これはC++2a言語仕様変更「符号付き整数型==2の補数表現を保証」の影響。提案文書 P1236R1 Alternative Wording for P0907R4 Signed Integers…

ラムダキャプチャ中での前置ellipsisと後置ellipsis

プログラミング言語C++において可変長引数テンプレートパラメータパックをラムダ式でキャプチャする際、そのキャプチャ方式によってellipsis(...)の前置/後置が異なることに注意。 template <typename... Ts> void func(Ts... xs) { // C++11以降: 簡易キャプチャ(simple-ca</typename...>…

Andrew’s C/C++ Token Count Dataset 2016

C++ C

プログラミング言語C/C++のトークン(記号・キーワード・識別子名など)出現頻度を調査したデータセット。約1.1万のOSSパッケージ/256万行のソースコードから5032万個のトークンを抽出。 (PDF) Andrew’s C/C++ Token Count Dataset 2016 (ACTCD16) http://w…

C++ Conceptsの短縮構文(P1141R2)

次期C++2a(C++20)標準規格に向けて採択された、コンセプト(concept)関連の短縮構文についてメモ。C++コンセプト概略ついては id:yohhoy:20170904 を参照のこと。本記事の内容は P1141R2 Yet another approach for constrained declarations に基づく。要約:…

関数テンプレート特殊化とADLの小改善

C++2a(C++20)における特殊化された関数テンプレート呼び出しとADL(Argument Dependent Lookup)に関する小さな改善。C++17現在の言語仕様では、タプル要素アクセス関数はstd::get<N>のように完全修飾名で呼び出す、もしくはusing std::get;により名前getを現在の</n>…

新機能は属性 or 構文 or 関数?

プログラミング言語C++標準化プロセスにおける、新機能の対応方針についての考え方。2018年Jacksonville会合におけるEWG(Evolution Working Group)ガイダンス。 構文上はオブジェクト(object)が対象のように見えるとしても、値(value)に関する属性を導入すべ…

クラステンプレートの非テンプレートメンバ関数でSFINAE

クラステンプレートのテンプレートパラメータに基づき、非テンプレートなメンバ関数オーバーロードでSFINAEを実現する方法。 template<typename T, typename U> struct X { // テンプレートパラメータT, Uによるメンバ関数オーバーロード void mf(const T&) { ... } // A) void mf(co</typename>…

アトミック、ときどきロックフリー

C++ C

C/C++標準ライブラリ提供のアトミック変数atomic<T>, atomic_Tでは、ロックフリー(lock-free)性判定マクロATOMIC_*_LOCK_FREE*1 が3状態 Never/Sometimes/Always を取りうる。C++11策定当時の提案文書N2427によれば、“ロックリーに振る舞う可能性あり”(ATOMI</t>…

hardware_{destructive,constructive}_interference_size

C++17で標準ライブラリ <new> ヘッダに追加された hardware_destructive_interference_size, hardware_constructive_interference_size について。 hardware_destructive_interference_size False-Sharing発生を防ぐために必要となる、最小のメモリアドレス距離。</new>…

C++標準ライブラリへのnodiscard属性

C++標準ライブラリにおけるnodiscard属性の使われ方についてメモ。関数戻り値の誤った破棄を警告する目的でC++17言語仕様に導入された。標準ライブラリではC++2a(C++20)からの利用となる。2018年8月現在、下記関数がnodiscard属性付与対象となっている。 ope…

文字列ビューstd::string_view 利用ガイド

C++

C++17標準ライブラリ文字列ビューstd::string_viewクラス*1利用上の注意点についてメモ。まとめ: string_viewクラス=文字列に対する読取専用のビュー。 std::stringと同じくヌル終端文字列以外も正しく取り扱える。ヌル文字を途中に含むことができる。 str…

C++標準ライブラリのビット処理関数群

C++2a(C++20)標準ライブラリに追加される <bit> ヘッダについてメモ。2020-05-11追記:(PDF)P1956R1が採択され*1、関数名が大幅に変更(ispow2→has_single_bit/ceil2→bit_ceil/floor2→bit_floor/log2p1→bit_width)された。"2の冪乗(powers of two)" への言及</bit>…